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反転衝動
久しぶりの更新そのいち。
一見甘甘っぽいフェイなのSSです。 オチまで読むと微妙な後味を味わえます。 普通に甘いのが好きな方は最後まで読まないことをおすすめ。 そしてほのかに微エロです。注意。 某所投下に若干の加筆のみ。 修正はしてないので微妙かもです。 StS若干ネタバレ含みます。矛盾があったら申し訳ないです。鼻眼鏡で微笑みながらスルーしてやってください。 大きなベッドひとつが、私のお城。 大きなベッドひとつが、私たちの楽園。 大きなベッドひとつが、彼女の檻。 【翼を折られた子供たちの楽園】 眼を覚ますと優しい眼差しがじっと、見つめていた。 赤い色はどこか血の色を連想させるけれど、不思議と怖くはなかった。むしろこの瞳に見守られているのだと思うと何だかくすぐったいような、やすらぎを覚えた。 「おかえりなさい、フェイトちゃん」 寝起きのふにゃけた顔で出迎えると彼女はハードな仕事の疲れも感じさせず、心底うれしそうに笑うのだった。 「ただいま、なのは」 そうして自然に落とされる唇を受け止めつつ、彼女の腕に縋るようにして身体を起こした。麻痺しかかった半身は、思うようには動いてはくれない。身を起こす動作一つですら、腕だけではままならなかった。なのははそれをもどかしく思っているが、フェイトはむしろ嬉々としてそれを手伝っている。 「お仕事とかどうだった?」 「……ん、いつもどおりだよ」 苦笑を浮かべつつ言葉尻を濁すのはいつものくせで。問い詰めたところでのらりくらりと話を反らされ、いつのまにやら言葉やキスや触れてくる手でほだされるのは見えているので、それ以上言葉を重ねることはしなかった。 「それよりもなのは、ひとりで大丈夫だった?」 苦笑から一転、フェイトは真剣な眼差しで心配そうになのはの顔を覗きこんだ。繊細そうな細い指先が頬や髪を滑り、くすぐったさになのはは身をすくめる。 「もう。小さな子供じゃないんだから、お留守番ぐらい出来るよ」 半日いない程度であれば、ベッドの周りは充実されているので上半身を動かせる現状では大概のことは出来るようになっている。それでもやはり、心配なのだろう。 「……なのはは少し、無防備すぎるんだよ。いや、少し自分を軽んじているのかな。 ともかく、心配なんだよ」 「………フェイトちゃんは、私を甘やかしすぎだよ」 「甘やかしたら、ダメかな?」 心底困ったように眉尻を下げて覗き込むように見つめられたら、ダメだなんて誰が言えるだろう。 「……………ぃもん」 「ん?」 「……だめなんて、言ってないもん…」 頬を赤く染めて俯いたなのはをいとおしげに見つめ、フェイトはその頬を包み込んだ。 「かわいいね、なのはは」 「あぅ……」 恥ずかしげに目を反らすなのはに笑みを深くして、フェイトは言葉を重ねた。 「かわいい」 「ぅ〜」 恥ずかしさの限界がきたのだろう、なのははフェイトの背中に手を回して、自ら倒れこむようにしてベッドにふたり、傾れ込んだ。不意打ち気味のなのはの行動に、きょとんと目を丸くする。そうしてフェイトもなのはの背中に手を回して、縺れ合うように、戯れ合うようにして互いの体温を感じ取った。 くすくすと、自然と笑いが零れた。ほんの少しの時間離れていただけなのに、温もりに餓えていたことに気付く。 暫くの間、ただその温もりを甘受した。指の間を擦り抜ける髪の感触が心地よい。なのはは目を閉じ、可愛がられるペットのようにじっとその手の温もりを味わっているようだった。 そしてふと、なのはの唇から吐息のような、か細い呟きがもれた。 「………ねぇ、はやてちゃんたち、どうしてるかな」 そんなに大きな声でもなかったけれど、密着した状態ではやたらと響いた。 「……あえなくて、さみしい?」 フェイトのその顔が曇ってゆくのを察して、慌てて言い募る。 「会いたくないって言ったらうそになっちゃうけど、寂しくないよ!」 「うそ」 「うそじゃないもん」 「なのははうそつきだね」 優しいうそつきさんだ。 少し悲しげな笑みを浮かべる彼女を見て、胸が締め付けられた。 嗚呼、そんな顔をさせたくはないのに。そんな顔をさせたくないから、だから……。 だから、そらをあきらめたのに 「……ごめんね?」 「どうしてフェイトちゃんが謝るの?」 「なのはに甘えてばかりだね、私は。 なのははゆるしてくれるってわかっているから、いつも」 いつも――――くしゃりと顔を歪めて、俯いた。 苦しげに細められた瞳からは涙がこぼれることはなかったけれど。何も涙を流すばかりが悲しみを感じていることではないのを、なのはは知っている。不器用な彼女が、ちゃんと泣けないことだって。 「……フェイトちゃんがね」 「……ん」 「フェイトちゃんが私を甘やかしてくれるのと同じで、私だってフェイトちゃんを甘やかしたいの」 だから、言って。したいこと、してほしいこと。たくさん。 キスを頬や額や目蓋に落とし、宥めるように背を撫でると。強ばっていた身体から自然と力が抜けてゆくのを感じ取った。 「………ねぇ、なのは。もう…何処にも行かないで」 「行かないよ。ずっとフェイトちゃんと一緒だよ」 どこにもいけないのだ、とはいわない。決めたのは自分。そうさせたのも、自分。 そう、なのはが囁くと、昔と変わらぬはにかむような笑みを浮かべて、彼女はぎゅっと抱きしめてくれた。身体を滑る指先が痛くなるほど、強く食い込んで。 何故だか泣きたくなるぐらい、切なくて。言葉を重ねなくても伝わる、気持ち。それでも溢れる気持ちが言葉になる。 「なのは……ずっと君の傍にいたい。君を傷つけるものから護りたい。君のすべてが、欲しい」 赤い瞳の奥にはいつの間にか優しさとは違う光が、灯っていて。ぞくりと背筋が震えるのを感じ取りながら、頷く代わりに、そっと互いの指先を絡めた。 「なーのは。まだ寝たらだめだよ」 「……ぅー……ねむいの」 甘く囁き、腕の中でぐずる彼女をいとおしげに見つめ、頬を緩める。指先に絡み付く髪は少し湿り気を帯び て、甘い香りを立ち上らせている。素肌の晒された肩はしっとりと吸い付くようで、感触が楽しい。 とはいえいつまでもこうして微睡んでいるわけにもいかない。 「ほら。シャワー浴びてから寝よう?」 「………んー……フェイトちゃん。だっこ」 「今日はなのは甘えん坊さんだね」 「……甘えていいっていったの、フェイトちゃんだもん」 それもそうか、と苦笑めいた笑みを口の端に浮かべ、いつの間にか差の開いてきた軽くて華奢な体躯をそっと抱き抱えた。 自分の足で歩くこともままならない彼女を抱きかかえて浴室まで行くのはこれが初めてではなく、ふたりでこの部屋に来てからは日課といっても良い。慣れたもので、彼女の負担にならないよう、慎重に力を込める。 ふと、肌に散る紅い花に、また血が上るのを感じる。 「フェイトちゃん?」 とろんとした、上目遣いの空色の瞳が、訝しげに見つめていた。 「あ、う、……なんでもない…」 急に恥ずかしくなって、またも沸き上がる衝動を振り払うように浴室へと急いだ。浴室に入るのには幸いというべきか何というべきか、たいした手間もいらなかった。 本当に眠いのだろう。こくりこくりと小さな頭が船を漕ぐ。湯船に浸からせるのは危険と判断し、シャワーだけで済ませることにした。 なのははフェイトのされるがままに躯を預けている。膝の間に身体を置き、肩に頭をもたれかけさせるようにした。密着する素肌をなるべく意識しないよう、身体を洗うことだけに専念する。 「どう?なのは」 「ん……」 なのはは気持ちよさそうに眼を細め、頬を緩ませた。長い髪を洗うのは手間ではあるけれど苦痛ではない。 むしろ年々自分と同じ長さになってゆく髪を見るたび、喜びがこみ上げる。丁寧に優しく泡を含ませ、洗い流した。今度は身体を、とボディーソープを手に取ったところで、なのはが見上げてきた。 「……フェイトちゃん、やってあげようか?」 「ん?」 「髪。まだ苦手でしょ?」 甘い声がからかいの色を含みながらフェイトの耳元へと届いた。 「だから。別に洗えないわけじゃ……っ」 「そうかなぁー……」 「ほんとだよ?それに……」 「それに?」 きみのからだがいまどんなじょうたいなのか、わからないはずもないだろう? 言葉を濁し視線を彷徨わせるとふと、肩越しに視線が合う。無垢な空色の瞳の中に、自分の血を思わせる瞳が移りこんでいた。この赤い色はいつだって、あの日を思い出させるから、好きじゃない。 内心の動揺を悟られないよう、さり気なく視線をそらしつつ。 「……ううん。なんでもないよ。その、無理しなくて、いいよ?」 「無理じゃないのに」 「あーでも、ほら。この体勢だと無理があるから。今度、ね?」 「そっかぁ……暫くフェイトちゃんの髪洗ってあげてないから、したかったのになー」 「ごめんね」 たとえわずかな負担だとしても、今のなのはには無理をさせたくはなかった。 俯く後頭部にキスを送り、ごまかすように指先を肌に滑らせた。 「……ぁ……フェイトちゃん!」 悲鳴のような甲高い声を上げて、逃げる指先を追いかけるように手を重ねた。いたずらな指先はするりと抜け出し、病的に白い肌の上を執拗に遊ぶ。 日差しに当たることのない生活から既に数ヶ月。健康的な色合いをしていた白い肌も、今では血管すら透けてしまいそうな、怖くなるほどの白さとなっている。わずかな戯れでそれが桜色に染まっていく瞬間が、密かに好きだった。 「……やっ…だめ」 「……ごめん」 最初こそごまかすつもりのものだったけれど、甘い声や跳ねる肢体にスイッチが入ってしまったようだ。いくらか抵抗するそぶりを見せていたなのはではあったけれど、背中越しに伝わる熱が伝わったのだろう。熱い吐息を漏らして、身体を弛緩させた。 「君を傷つけるものは全て、消してあげるから……」 意識が白くなって、消えてゆく瞬間。 囁きが、聞こえたような気がした。 後味の悪くなる蛇足的小話。 「なのはちゃん、最近はどうしてるのかな……」 「そりゃ一生懸命やってるに決まってるじゃない! ……最近は、手紙も来ないけど、さ」 「ねぇ、はやてちゃんはどうしてるか知ってる?」 「………はやて?」 「……へっ?!あ、ごめん、聞いてへんかったわ」 「もう!最近ずーっとそんな調子じゃないの」 「大丈夫?」 「あはははは……ちょお最近仕事の方がなー」 「大変そうだね……」 「ごくろーさま」 「おおきに」 「で、はやて」 「うん?」 「最近どうなの……その、なのはの調子」 「……なのはちゃん、な。 あーその、やっぱすぐにでもってわけにもいかへんみたいやわ。 会えるようになるんは、まだ先やないかなぁ……」 「そっかぁ…」 「まぁなのはちゃんのことやから、そのうちひょっこり顔出すて」 「うん、そうよね!」 「ねぇ。フェイトちゃんも付きっきりなの?」 「あー…そうかもしれへんね。 執務官試験もそろそろ言う話やし……うちもよう知らへんのよ」 「……そっか」 「早く、なのはの怪我が治ると良いわね」 「せやね……ただ」 「その……神経が、なのよね?」 「そう。私といっしょで、リハビリが………」 「……つらいよね」 「でも。なのはちゃんやから、きっと」 「うん」 「きっと」 「……あ、私たち塾があるから、ここで」 「うん。ほなまた明日」 「ごめんね」 「ばいばい」 「さよなら」 「言えへんなぁ……ふたりが、行方不明やなんて」 |
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